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特集

【Pioneer’s Session VOL.8】杉本健 × 中西宙 × 岩城敦大 <後編>

第8回 Pioneer's Session 取材の様子

平素より慶應ラクロスへ多大なるご支援、ご声援をいただきありがとうございます。
今回は第8回となる対談の後半をお届けします。

今回は、慶應のゴールを守り続けてきた守護神である「ゴーリー」をテーマに、卒業生からは杉本健さん(2019年卒)、中西宙さん(2023年卒)、現役部員からは岩城敦大(3年)に参加していただきました。

後編の様子もぜひお楽しみください。

ゴーリーの練習内容について

中西さん:
岩城に対しての質問は、僕が今コーチとして関わらせてもらっているのもあって、ある程度今の慶應ラクロスのチーム事情を知っているという背景もあるんですけど、岩城に対してというだけではなく、杉さんの時はどうだったのかなという意味で、ゴーリーの立場、権力みたいなところを1個聞きたいなと思っていて。

杉本さん:
部内のヒエラルキーみたいなもの?

中西さん:
そうです。
僕の時は、シューター側が「たくさん本数を打ちたいから」という理由で、「ある程度意味のある練習だけゴーリーは入ってくれ」みたいなことがあって、あんまりゴーリーがSD(Shooting Drill)に全部入るみたいなことはなかったんですけど。でも、今の慶應ラクロスの練習を見ていると、めちゃくちゃゴーリーが練習に入っているなとか、それってゴーリーいなくても一緒じゃんっていうような練習にも入っているんですね。
杉さんの時はどうだったのかなっていうのをお聞きしたいです。

杉本さん:
俺の時どうだったっけな。
いやでも、なんか基本全部入ってた気がする。
てかまず、1年の時は一番ひどくて、地獄だった覚えがあるな笑。
シュートも近かったし、あとラントレの前にシュート練だったから、結構しんどいし、「トレーニング続きじゃん、俺だけ」みたいな感じてたのは覚えてる。
3年の時も、1・2年の時ほどではなかったけど、普通にシュート練は入ってたかな。今思い出してみたら、4年の時も全然入ってたな。
たまに、コンディションが悪い時には、他のゴーリーに「自分の代わりに出て」って言ってたかな笑。

岩城:
全体の練習に入っていない時は、どんなメニューをしていたんですか?

杉本さん:
今とあまり変わらない、ポジ別だと思うけど。
印象に残ってるのは凱章(2022卒・藤井凱章)って結構、構えがめっちゃ足広げて、どっしり構えるでしょ?
ポジ別でゴーリーが暇な時に、いろいろメニューを考えてたんだけど、とある時に、「なんで外人ってあんなに足広げて、あんだけ動けるんだろうな」みたいに思って、「ちょっと凱章やってみて」「研究してきて」って、散々フォーム真似させたりとかは、結構してたな。今思ったら無茶ぶりだったなとは思うけど笑。俺らの代は、凱章みたいな1年生も結構Aチームに入れてたからね。
ゴーリーは、凱章か野上(2022卒・野上達也)どっちかは絶対入れてたし、ロングで言うと八星(2022年卒・八星輝)とか入れてた。ミディだと脩眞(2022年卒・田村脩眞)とかかな。結構、各ポジション1〜2人ずつぐらいはAチームに入れてた気がする。

中西さん:
俺がアーセの時は、SD60分入り続けるみたいな感じでした。
アーセのゴーリー1枚だし、抜けられないし。アーセコーチの浅岡さん(2019年卒・浅岡大地)、たぶん杉さんと同じ代の人が「痛くない!」って言ってた気がするな。
やばいって言いながら練習に入ってた記憶があります笑。だんだんチームが上に上がれば上がるほど、シュートも上手くなるから、楽しくSDができるようになっていったってのもあるかもしれない。
それこそ遊び心じゃないけど、上のチームに上がるほど、「たまたま止めれちゃった」とか、「ぶつかったのかな?」から「止められた!」になる気はするかな。

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現役時代、印象に残ってることを教えてください。

岩城:
一番印象に残ってるのは、僕が1年生の時に出してもらった、23年シーズンFinal4の法政戦ですね。
試合の結果としては、4-8で負けてしまいました。試合のプラン的には、1点取られたら交代という前提で、スタートは浜地さん(2025年卒・浜地航太郎)。1点取られたら僕が出て、ゾーンディフェンスを使い、守り切る作戦でした。それを当日やったんですけど、普通にボコボコにされまして。
特に何もできないまま点を取られてしまいタイムアウトを取って、自分から浜地さんに交代して、元の戦術に戻してという形で試合は進んでいきました。結果としてはその試合で負けてしまい、その代は引退ということになって。結局、試合に出たけど何もできなかったなっていうのがすごく悔しかったです。
人生で一番泣いたんじゃないかっていうレベルで試合後に大泣きしました。なので、すごく印象的というか、僕のラクロスキャリアの中で一番心に残ってる試合です。今でも鮮明に覚えてるんですよ。決められた瞬間の会場の雰囲気とか、すごく覚えていて。今でも、負の原動力になってます。「もうあれは二度と嫌だ」っていう気持ちで、今は日々臨めてますね。

中西さん:
僕は、気持ちがプラスになった試合とマイナスになった試合があります。
それぞれ1つずつ挙げると、まずプラスになったのは、4年の時の早慶戦です。4年生になって、ようやくAチームで出る機会をいただいて、六大学戦はあったんですけど、初めての大きな試合というところで。当時のプランとして、僕ともう1枚のゴーリーの岸が2クォーターずつ出るっていう形でした。僕は3Qから出させてもらったんですけど、その日めちゃくちゃ調子が良くて、正直、自分の人生で一番歓声を浴びたなっていう感覚がありました。
慶應の応援もすごかったし、早稲田側もシューターが打つタイミングだったので、当然盛り上がるじゃないですか。両チームとも盛り上がってる場面で自分が止めたっていうのは、「うわ、Aの試合ってこんなに気持ちいいんだ」って、本当に感じました。
あの経験は、すごく自分にとってプラスの原動力になったなと思っていて、今でも一番「良かったな」って思える瞬間かもしれません。
逆にマイナスだったのは、自分たちが最後、全日本選手権でファルコンズに負けた試合です。
この試合も、2クォーターずつの出場でしたが、結果として12点取られてしまって。
1クォーターで6点取られてしまい、チームが諦めムードになってしまったというのが印象に残っています。

02

この試合が印象深い理由は2つあって、1つは、それまでの過程。僕たちは、学生同士なら絶対に負けないくらいのチームだったんですけど、じゃあ果たして「全日優勝を目指すチーム」として、1年間、あるいは4年間、しっかり社会人を倒すための練習をしてきたのかって言われると、たぶんそうではなかったなと思っていて。
例えば、4年の時は、学生相手には練習試合でもほぼ一度も負けてないような状態だったんですけど、じゃあもっと社会人と練習試合や合同練習の機会を増やせばよかったんじゃないかとも思いました。それを薄々わかっていながらも、自分の実力があまり伴っていないという負い目から、それをチームに言えなかったです。そういう「発信力の無さ」をすごく後悔していますし、それが記憶に強く残っています。
もう1つは、その試合で自分が2クォーターしか出られなかったということ。
正直、自分の中ではあくまで主観ですけど「自分の方が止めてたな」っていう印象がありました。でも、どうしても4年に入るタイミングで、ちゃんと自分が実力で上回れていなかった。
「誰から見ても実力で上」と言えるところまで持っていけなかったから、結果として2クォーターしか出られなかった。だから試合が終わった時、なんとなく「自分ならあれ止められたんじゃないか」みたいな感情を持ちながら、最後引退してしまったっていうのは、反省というより”後悔”ですね。

杉本さん:
ネガティブなものは何個かあるんだけど、どれだろうな。
1年生の時の一番最初の開幕戦で、当時2枚目で、4年生のゴーリーの方が1人いたんだけど、その人が脳震盪か何かで出られなくなっちゃって。
それで俺か、もしくは俺の1個上でニューヨーク校出身のゴーリーの人かの2択で、直前の練習で全然俺が止めらんなくて、もう1人の先輩がスタートっていうのは決まってたし、怒られ方的にも、「自分が試合に出ることはないな」って普通に思ってたんだけど。
その人が、初戦東大戦だったんだけど、1Q開始10分ぐらいで、3~4失点ぐらいして。
最初はちょっと冗談半分で、コーチとかに「出るかもよ」とか言われてたんだけど、途中から、結構いよいよ本気のトーンで「出るぞ」みたいな感じで言われて、急遽出場して。
もはや試合の途中とかあまり記憶にないんだけど、印象深いのが、一番最後の最後。同点、残り5分ぐらいで、相手のシューターにリスト少し下ぐらいから打たれて、普通に決められて。1点差で負けた試合があった。
その時はもう頭が真っ白で、「悔しい」とかっていう感情もなかったし。
だけど、「こうやって人の人生とか、チームも変わっちゃうんだな」っていうのは、すごく重かったし。やっぱりスタンドで圧倒的に先輩たちが多い中で出させてもらえたありがたみと、ちょっとした”重み”というか、そういうのをめちゃくちゃ感じた。ネガティブというより、むしろポジティブなのかもしれないけど、そういう経験があったというのは、すごく印象深い試合です。

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もう1つは、ハイライトにも上がってたりするけど、3年の時の関東ファイナルの早稲田戦。
本当に残り10秒ぐらいで、1点差で勝ってて、相手ボールになって、その前に、残り30秒ぐらいで相手がまくり打ったのがポストに当たって跳ね返ってマイボールになったんだけど、俺の同期がよくわかんないパスを出してパスミスして、相手ボールになって。
回り回って、相手がうまいこと崩して、ゴール前の選手にパスが渡っちゃって、ゴール前、ゴーリー1on1、残り10秒、みたいな状況で、なんとかセーブして、そのまま1点差で勝ち切った。
今思えば、その瞬間は別に何も考えてなかったし、たぶんとっさに出て、とっさにセーブしたっていう感じだったけど。
さっきの話の“逆”じゃないけど、本当にそのセーブ1つで自分たちのチームとか人生が変わったし、めちゃくちゃ嬉しかった。本当にダイレクトに勝利に貢献できたし、何度見ても気分が上がるなっていうところで。これこそやっぱりゴーリーの醍醐味というか、チームを救う、試合を決める、みたいな感覚はあったかなって思ったね。
あと、さっき話した“遊び心”の話にもつながるけど、ゴーリーアップでちょっと遠目からのシュートに飽きたら、ゴーリー1on1でよく先輩とかと遊んでたから、そういう日頃の“遊び”が成果につながったっていうのも含めて、めちゃくちゃ嬉しかった試合だったかな。

中西さん:
僕は、杉さんの印象に残ってる試合って、めちゃくちゃ逆転勝利したFinal4の一橋戦かと思ってました笑。

杉本さん:
あの試合もすごかったね。
あの時はね、もういろいろすごかった。まず、前半2-6で負けてて、しかもマンダウンで始まったんだよね。それで3クォーター早々に失点して、2-7になって、「もうこれ終わったな」って思ってた。
あの試合は俺、前半終わった時点で普通に泣いてた笑。

中西さん:
そうですね、確かそうだった気がします。

杉本さん:
そこからバーっと点数を広げたんだけど、また追いつかれて。
残り10秒ぐらいで、リストあたりから慶應が放ったシュートをゴーリーが弾いてそのまま入って一点差で勝った試合だった。
あの年はね、早稲田にリーグ開幕戦でダブルスコアで負けてるんだよね。
もっと言うと、早慶戦は同点でそれからの最後ファイナルで1点勝ちだったから。そういう流れも含めて、あのシーズンはすごく印象に残ってるな。

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現役選手に向けて一言お願いします。

中西さん:
もちろんAチームとかで、僕はさっき言った早慶戦みたいに、忘れられない思いをさせてもらったんで、まず第一に「選手としてしっかり上に行って、上手くなって活躍する」、それを全員が目指して頑張ってほしいなって思います。
それに加えて、人間として「すごく愛される人間」になってほしいなっていうのはすごく感じていて。
上に行った時に、「あいつ嫌なやつだけど出てるわ」って思われるのと、全員からは難しいかもしれないけど、「〇〇出てるわ!頑張れ!」って後輩だったり同期から応援される人間になるのとでは、実際出場しているときの意味も全然違うなって思うんですよね。
だから僕もある程度そこは意識していて、たとえばボールアップだったりとか、スタッフへの態度、言葉遣いはちょっと気をつけるとか。ほんの少し気をつけるだけでも、その気遣いにはいろんな人がきっと気づいてくれるはずだから。もちろんラクロスもそうですけど、人間として、豊かな人間になってほしいなっていうのはすごく思います。

杉本さん:
ゴーリーとして言うと、しっかり自分の”バリュー”を出してほしいなと思ってます。
やっぱりゴーリーってポジション柄、何も考えずとも受け身で、ある程度仕事はあるし、自分から何か動き出さなくても、何も考えなくても、それなりにやれるポジションではあるんだけど、でもそれだと面白くないし。
やっぱりチームが勝つためにとか、自分がもっとステップアップするために、「何をしたらいいんだろう」とか、「自分がどういうプレーをできたらいいんだろう」っていうのをすごく考えるとすごく面白い。
その”遊び心”的なところも含めて、僕はそう思うかな。これって、結構社会人になっても同じことが言えて。社会人も、何もしなくても仕事はあるっちゃあるし、ある程度は降ってくるけど、
でも、自分に何ができるのかとか、自分としてのバリューをしっかり考えて発揮しないと、その先って何もなくなっちゃうし、「別に誰でもできんじゃん」ってなっちゃう。
だからこそ、「この人だから任せたい」とか「この人にしかできない」と思われるような、
そういうバリューを出せるかどうかが大事だと思うし、これはたぶん、他のポジションよりもゴーリーの方が受け身な分、より問われると思うんだよね。
だからこそ、今AだろうがBだろうがCだろうが、どのチームにいても、1年生だろうが、
「自分の強み」を1個見つける、あるいは見つけようとする、作ろうとする努力は、ぜひしてみてほしい。
この間の日体戦を見てても、岩城くんは1年生の時の方がある意味では”強みと弱み”がはっきりしてたなって思ってて。
今は、良くも悪くも”上手い感じ”に落ち着いてる感があるから、さらなるステップアップを目指すなら、「これが慶應の岩城だ!」みたいな、「ここは絶対どの学生にも負けない」っていう持ち味があると、もっと良いんじゃないかなって思う。
例えば、俺だったらクリアとゴーリー1on1は、結構自分の中で自信があったし、「毎試合ピンチの場面1回は止める」って思ってたし。そういうのがあると、どんなに調子悪くても自信は保てる。だから、そういうものをぜひ見つけて、頑張ってくれたらいいなって思います。

岩城:
何か自分の強みを頑張って探してみます。
確かに、「1試合に1回ゴーリー1on1を止める」みたいな目標は立ててはいるんですけど、今思うと、杉本さんがおっしゃってたように、1年の頃の方がもうちょっとはっきりしてたなという感じがありますね。
明日から心に刻んで練習に臨もうと思います。本当にありがとうございます。

杉本さん:
そうだね。
この間の試合、配信で見させてもらって、さっきの”遊び心”じゃないけど、
練習中、もちろんサボってるとは思わないんだけど、試合を見てて、「練習中にあんまり遊び心が無いのかな」って思っちゃった。

岩城:
最近は無くなってきてますね。

杉本さん:
パスも全然悪くないし、開幕戦でチャレンジングなことできるかって言われたらそうじゃないけど、遊び心が無さそうに見えたというか。

岩城:
確かに、腰が引けてましたよね笑。

杉本さん:
そうそう。だから、もっと挑戦していいのになって思う。
だって、良くも悪くも3年生だからさ。尻拭ってくれるのは4年だし。クリアのパスとか、それこそゴーリー1on1とかもね。やっぱりビッグセーブした方が気持ちいいじゃん。
例えば、シュート練でカットインとかあるかわかんないけど、あれ疲れるし、こんな暑い中でやるの大変じゃん。俺がよくやってたのは、最初の1周はもう一切セーブしない笑。
本当に棒立ちだと練習の士気を下げる可能性があるから、ちょっとそれっぽく振る舞うけど、
とりあえずその人の”癖”をめっちゃ見る。「棒立ちで動かなかったらどうフェイクするのかな」とか、「どこに目線あるのかな」とかをめっちゃ見て、その次の回でそれの裏をかいてみたりとか、ちょっとだけポジショニングをずらしてみたりとかして。そうやって、自分の中で遊んでた。こういう取り組みが、意外と試合中で生きたりもするし。ぜひ、ちょっと練習中にやってみてね。

中西さん:
SDも、100本打たれてるうち、100本全部に集中するのは無理だから、
じゃあ「この10本だけ集中しよう」とか、「20本でのセーブ率90%を目指そう」とか、「80%を目指そう」とか。もちろん、さっきも言ってたみたいに、ある程度”ごまかす”というか、「やってるよ感」は出すんだけど、でもやっぱり自分のためにもなるように取り組むのは大事だなって思います。

杉本さん:
そうだね。練習ってチームのためでもあるけど、やっぱり“自分のため”だからね。

岩城:
本日はお忙しい中、お時間いただきましてありがとうございました。
いろいろな世代のゴーリーの方々が集まって、お話を伺える機会というのは、そうそうあるものではないので、
大変貴重な機会となりました。どうもありがとうございました。
これからもリーグ戦は続いてまいりますが、
”慶應のゴーリー”の名に恥じないよう、頑張っていきますので、今後とも変わらぬ応援をいただければと思います。今後ともよろしくお願いします。

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