【Pioneer’s Session VOL.8】杉本健 × 中西宙 × 岩城敦大 <前編>

平素より慶應ラクロスへ多大なるご支援、ご声援をいただきありがとうございます。
第8回となる今回は、慶應のゴールを守り続けてきた守護神である「ゴーリー」をテーマに、卒業生からは杉本健さん(2019年卒)、中西宙さん(2023年卒)、現役部員からは岩城敦大(3年)に参加していただきました。
今回は前半の様子をお届けします。
ぜひお楽しみください。
自己紹介をお願いします。
岩城:
現在、3年生の岩城敦大と申します。背番号は2番をつけさせていただいております。
本日はよろしくお願いします。
中西さん:
チームのスローガンが”PRIDE”の代で、ゴーリーをやっていました中西宙と申します。背番号は13番でした。僕はアーセナル出身で、現在は岩城のような現役の慶應のゴーリーの選手を指導するゴーリーコーチをやらせてもらっているんで、少しチームに関わりがあります。
よろしくお願いします。
杉本さん:
僕は2019年卒の杉本健と申します。
現役の時の背番号は、1年生の時は16番で、2年から4年生の時は2番をつけていました。
僕は塾高からラクロスを始めて、今社会人7年目なので、ラクロス歴14年目みたいな感じです。よろしくお願いします。

ゴーリーになった経緯を教えてください。
杉本さん:
ゴーリーを自分から選んだというか、勧められた感じだったな。
高校1年の時に、最初の練習試合はディフェンスとか普通にフィールドで出たのを覚えているんだけど、その後にサマーに向けてたぶん、作んないといけないみたいになった時に、当時のコーチから「ディフェンスか、ゴーリーやってみたら?」っていう話をもらって、なんとなく試合出れそうっていう言い方も変だけど、唯一無二的なところはあるし、あと体力とかそういうのに自信がある方では決してなかったので笑。苦手を隠すっていう意味でゴーリーを選びました。
中西さん:
僕はアーセ出身で、そこからゴーリーになりました。
6月ぐらいからゴーリーになったんですけど、やっぱり、1番目立つポジションじゃないですけど、そういったところは感じてたのがポジティブな理由で、あとはネガティブな理由がほとんどですね笑。
僕の代は結構、ニューヨーク校も塾高も多かったです。1年生からAチームに入ってる選手がたくさんいて、「もうAのATは3枚とも1年生で」みたいな感じでした。だとすると試合に出るってなった時に厳しいのかなっていうのもありました。僕の同期のゴーリーや、上のゴーリーの凱章さんと野上さんもめちゃくちゃレベル高いっていう話は聞いてたんですけど、他のポジションよりも勝負できるのかなとか、あとは自分の考える力みたいなのは、ちょっとだけゴーリーに向いてるのかなと思って選びました。
杉本さん:
絶対選んだ時、そんな考える力とか考えてないでしょ笑。
中西さん:
バレました笑。
本音を話すと、浪人して大学に入ったっていうこともあって、体のキレもほぼ0の状態だったんで、他のアーセの、バリバリアメフト部でやってましたみたいなやつと身体能力の差みたいなのはちょっと感じてたっていうのが理由ですね。
全部ネガティブな理由になっちゃって、あんま良くないかなと思うんですけど笑。
岩城:
1番は、元々やってたサッカーでもゴールキーパーをやっていたので、ちょっと馴染みのあるポジションだったっていうところが1番大きいかなと思います。
僕は普通部からラクロスをやっているんですけど、中学1年生の冬の時に、慶應の女子校と一緒に試合をする機会があって、その時に「ゴーリーがいません」っていう話になりまして、「サッカーとかでゴールキーパーやったことある人」っていう謎の挙手が始まって、中学1年生の僕は手を挙げてしまいまして、そこからゴーリーを長らく務めさせていただいてますっていうのと、あと、元々僕もあんまり体力とかに自信が全くなくて、本当に走ることから逃げてきた人生だったので、もうちょっとその短所から逃げられるかなと思ってゴーリーをやってます笑。

試合前の過ごし方について
岩城:
試合の前日の話なんですけど、試合の当日はそんなに何も思わないんですけど、前日に無駄に緊張しちゃう癖が抜けなくて。僕も一応ありがたいことに大学1年生の頃から試合には出させてもらってるので、場数そのものは踏んでるんですけど、どうしてもその前日の緊張みたいなのが全然抜けなくて。
当日になったらもう別に何も緊張しないんですけど、前日にピシッとしてしまう感じの、かしこまり方になっちゃって。緊張がちょっと課題なんですけど、どのように試合前日は過ごされてましたか?
中西さん:
僕は岩城と杉さんよりも、Aだったり大きい舞台での試合経験は少ないんですね。
僕は4年生からようやくAチームでちゃんと出られるようになったっていう形なので。
ただ僕は、いい意味でも悪い意味でも、そんなに自分が失点することだったりに対してマイナスなイメージがなかった。
「別に失点してもディフェンスが悪いしな」ぐらいに思ってた。
なんか、「これは7割止められるけど、3割は決められる。その3割がたまたま当たったんだ」ぐらいの感覚でずっといられたので、緊張はあんまりなかったかなって思います。ただ、早慶戦の前日の練習後に、みんながシュートばんばん打つアフター練に入った時にボッコボコに決められて、しかも早慶戦が開催される会場だったので、本当に泣きそうになりました。
泣きそうになりながら、「もう俺、明日試合出ない」って言って、一旦ラクロスから離れました。
なので、「ラクロスから離れてた」が、俺の中での正解かもしれない笑。
何か、杉本さんは緊張のほぐし方とかありましたか?
杉本さん:
そうだね。今、岩城くんは3年生だっけ?
岩城:
そうですね。今、3年生です。
杉本さん:
そうだな。確かに色々緊張はしてたなって思って。
2年になろうが3年だろうが4年だろうが、なんならこの間、クラブチームでの試合で、ちょうど土曜日がリーグ戦だったんだけど、案の定その日の夕方の試合まで、結構ソワソワしてて、「どうしようかな」とか思って午前中を過ごしてたんだけど笑。
3年生の時は前日とかは結構、壁当て行ってたかな。
試合とかもそうだけど、やっぱり1本目セーブするまでが、たぶんめっちゃ緊張するじゃん。
なんなら1本目シュート打たれるまでめっちゃ緊張するし。
1本目がちょうどいい感じで枠外だったらちょっと緊張解けるみたいなのはあると思うんだけど。なるべく、ボールが自分のクロスの中に収まってる感覚をギリギリまでちゃんと感じとくっていうことで、壁当てをするし、その前にスカウティングの動画とか見て、その上で壁当てをして、最後に調整するっていうようなことをルーティーンとしてやってた。あとは、「ディフェンスのせいにする」っていうのは、結構その通りで。
言い方悪いけど、3年生の時なんて別に引退かかってるわけじゃねえしって感じで。
特にあの当時の1個上は、人数も少なかったりとかで、それこそキャプテンの人はゴーリーアップずっとペアでやってくれてたり、ロングの先輩とかもその前の年から一緒にやってたりして、よく知った仲だったので、ある意味では「あの人たちに任せりゃいいや」とか、「あの人たちが選んだのが俺だし」ぐらいの感じで思ってたかな。
中西さん:
壁当てとスカウティングは、この質問の正解の答えすぎてずるくないっすか笑。
僕の答えがバカみたいじゃないですか笑。
杉本さん:
いやいや笑。
でも結構、壁当てしてた。幼稚舎の裏でめっちゃやってた。
岩城:
次からは前日はその壁当てとスカウティングで過ごそうと思います。
これは絶対に正解なんで笑。

モチベーション管理の仕方について
岩城:
練習って大変じゃないですか。
他のポジションのことはちょっと分からないですけど、ゴーリーって、たぶん練習が1番きつくて、試合が1番しんどくないじゃないですか。
正直、「自分がやるぞ」という気持ちで、日々の練習に向き合い続けることが、あんまり僕はできなくて。その気持ちの持ち方みたいなのって、何か意識されてたことがあったらお伺いしたいです。
中西さん:
これも、僕と岩城と杉さんはちょっとタイプが違ってて。
岩城と杉さんはどちらかっていうと、もう1枚目で出るのは、こんな言い方したらあれだけど、ある程度確定。実力的にもある程度群を抜いてる、みたいな形で。
僕の場合は、スタメンの枠を結構争ってたみたいな感じなんだよね。ただ、そういった話をしてもたぶん岩城へのアドバイスにならないと思うので、別の視点から言うと、僕が意識してたみたいなこととしては、ゴーリーが1on1で止めたときに「おっしゃー!」って言ったり、逆に決められたときにめっちゃ萎えてたりしたら、たぶんチームの士気ってのはめっちゃ上がるんだろうなっていうのは、すごい感じてて。例えばAチームならAチーム、BチームならBチームのゴーリー1枚なり2枚なりで、結構チームに与える影響ってのはすごい大きいなっていうふうに感じてたんで、ある程度感情を出したりとか、チームを盛り上げるために、もちろん自分の練習にもなるけど、みんなが気持ちよくやるための雰囲気作りは意識してたかもしれないです。
ランシューをめっちゃうまいところに決められたら、「めちゃくちゃいいじゃん!」って言うだけで、たぶんシューターはちょっと気持ちよくなって、「もう1回そこ打ってみよう」って思ったりとかして、チームは良くなっていくのかなってのは感じてました。自分が上手くなるためのモチベーションも大事だけど、チームを上手くさせるためのモチベーションみたいなのも、今の岩城みたいに群を抜いてるんであれば、持ってほしいかなっていうふうに思います。
岩城:
あんまり感情を出すというか、鼓舞する系は僕ちょっと苦手で笑。
中西さん:
岩城みたいにめっちゃ上手いゴーリーが、ボソッと「めっちゃランシューうまかったわ」って言ったら、たぶん、俺がシューターだったらめちゃくちゃ喜ぶと思うんだよ。
そういうのも、人それぞれやり方は違うだろうけど、あってもいいのかなって思う。
岩城:
良いお話を聞きました!ありがとうございます。
岩城:
杉本さんはどうですかね?
杉本さん:
そうだね。
学年によって違うと思うんだけど、4年の時は立場もあるし、ある程度自分の練習はもう自分のためっていうよりも、結構チームのためにって感じが強かったかな。それはそれでいろいろな考え方とか振る舞いとか、あったかなと思ってて。あえて、今の岩城くんの立場、3年生でっていうところで言うと、3つあるかな。
1つ目は、目標が”日本一”なわけじゃん。当時はファルコンズってなると、やっぱり慶應生ってさ、学生全体で見てもシュートがあんまり上手い方じゃないじゃん。今はわかんないけどね。でも、たぶん上手い方じゃないと思うんだよ。グラウンドが無限に使えてシュート練習出来る環境じゃないし。
そうなると、練習である程度決められてたら、試合で社会人1位の相手にセーブしまくって活躍できるわけもなければ、勝てるわけもない。しかも練習っていう、まったくプレッシャーがなくて、普段やってる癖も全部わかってる仲間に対して、やっぱ決められちゃダメだよねっていうメンタルでいつもやってた。
逆に言うと、決められたら「なんで決められたのか」っていうのを、1個1個本当に自分の中で反省というか、その都度分析して、「じゃあ次こうしてみよう」みたいな感じで、結構やってた。
練習っていう長い時間で区切っちゃうと難しいんだけど、1本1本単発でそういうことを考えてたかな、っていうのが1つ。

2つ目が、その日のテーマを決めて結構やってたかな。
特に2年生とかの時は、「先輩に迷惑かけないように」とか、「自分がひたすら上手くなることで」みたいな感じだったけど、3年生になると、ある程度去年も出てたら発言力あるし、「お前は安定してるから」ぐらいに見られちゃう。
だからこそ、例えばクリアでちょっとチャレンジングなパスを出しまくるとか、セーブもポジショニングひとつ取っても「ちょっと1歩出てみる」とか、一工夫してた。
あとは、指示出しとかね。3年生ぐらいから考えたのが、「なんで試合になると止めらんないんだろう」ってずっと思っていて。
練習中のシュート練は、普通にセーブ率8割とか超えるわけじゃん。
「なんで試合になると止めらんないんだろう」って思った時に、「試合ってやっぱり不規則というか、予想できないからかな」ってなって。
じゃあ、「練習中の6on6とかでそういう予想ができればいいんじゃね」みたいな話から、相手の動きを予測してポジショニング取ったりとか、いろいろチャレンジしてて。
そうすると自ずとディフェンスの理解力や、オフェンス理解力みたいな、IQ的そのものが上がるってところに、面白さを覚えたっていうのが2つ目かな。
3つ目が、一番大事なんだけど、”遊び心”。
当時、1個上の主将の人も言ってたんだけど、「もうエンジョイラクロス」で。
ゴーリーアップひとつとっても、ゲーム感を出すというか、さっきの宙くんのやつじゃないけど、止めたら「どんなもんだ!」ぐらいの感じで。
特に同期とか後輩を煽るのは俺のキャラじゃなかったから、先輩だけ煽ってた、っていう感じで。そういうのも楽しいし、いいんじゃないかなって感じかな。
中西さん:
確かに、惰性でやろうと思えば練習の時間なんて流せるからこそ、いろいろ考えながらやらないと、ただ痛いだけの時間みたいになっちゃいますよね。
ちゃんと「自分がうまくなるためにその時間を使う」みたいなイメージをすごく持ってる方がいいなって思います。
杉本さん:
うん、そうだね。
その日、止めらんないのはたぶん理由があると思うしね。
プライベートでいろいろあって集中力がないとか、何かしらあるじゃん。例えば俺だったら、調子悪い時はシューターの表情が見えちゃう。でも、調子良い時はシューターの表情なんて一切覚えてなくて、ただひたすら止めてた。記憶も、調子が良い時は止めたこと自体あんまり覚えてないんだよね。
逆に調子が悪い時は、「どういうシチュエーションで打たれて、どういう振り方を相手はして」っていうのがめちゃくちゃ鮮明に覚えてる。だからこそ、練習中に「今日、調子悪いな」って思った時に、あえて何も考えないようにするとか。たまにやってたのは、途中で目をつぶる、見ないようにする、瞬きをちょっと長めに取るとか、そういうのをあえてやってみたりしてた。あとは、試合中の対策として、調子悪い時は、セーブはもう捨てて、他のことに注力するみたいな。それで「自分のリズムをどう作るか」っていうのを、研究したりしてたかな。
岩城:
割と惰性で流しちゃってるところが、僕は今すごくあるなと感じたので、いろいろチャレンジしてみようと思います。
“遊び心”のところは、僕でもできそうなので、何か自分なりに探してみようかなと思います。ありがとうございます。
前半はお楽しみいただけたでしょうか。
後編は一週間後の9月16日の投稿を予定しております。
乞うご期待ください。