【日記リレー2025 VOL.14】「挑戦」~太夫勇人(4年/医学部/MF/#37/慶應義塾高等学校)~

多田からバトンを受け取りました。太夫勇人です。
多田とはたしかにあまり絡んだことはありませんが、実はCチームコーチとしてチームを引っ張る彼の姿からはかなり刺激をもらってます。先日の育成リーグ後の挨拶では、澄まし顔をしながらも口元はニヤニヤして勝利の喜びが溢れちゃっててかわいかったです。あと足が臭くて部屋が汚いのはまだ誰にもバレてないのでこれ以上広めないでください。
はじめに、平素より弊部に関わってくださっている監督方、社会人コーチ陣の方々、慶應ラクロスOB・OGの方々、ラクロス協会の方々、保護者の方々へ、心より感謝申し上げます。皆様のサポートのおかげで自分たちは日本一という目標を目指すことができています。今後とも変わらぬご支援、ご声援のほどよろしくお願いいたします。
毎年先輩方の日記リレーは全て読んでいましたが、いざ自分の番になると不思議な気持ちです。偉そうにラクロスについて語れるほど何かを成し遂げてきていないので、何を書くかものすごく悩みました。しかしこんな機会もなかなかないと思うので、自分のラクロス人生を振り返りながら、自分の中で覚悟を決めるためにも、思っていることを綴りたいと思います。
高校入学前に、慶應ラクロス部OBであった友人の父親に誘われてラクロスというスポーツを知った。幼少期から海外生活が長く、一つのスポーツに真剣に打ち込むという経験がなかった自分はラクロスという全く新しいスポーツに強く惹かれた。「全員が高校や大学から始めるスポーツなら、自分も初めて一つのスポーツに打ち込むことができるかもしれない。」そう思った。帰国後、すぐにラクロス部がある慶應義塾高校への進学を決めた。
高校3年生の時には主将を務めさせてもらった。一個上の先輩たちの優秀な戦績、ほとんどがリーグ戦未経験者で構成された“新しいAチーム”、コロナの影響での短い練習時間、自分の圧倒的なラクロスの技術不足、これらによる焦燥感と責任感からチームメイトとろくにコミュニケーションも取らず、とにかく厳しい言葉をかけ続けてチームに緊張感をもたらし、強引にチームを勝利に向かわせようとした。今振り返るともっとうまいやり方が絶対にあったと思う。アップを真面目にやらない同期に怒鳴ってしまい、そこからプライベートでも話しづらくなったこともあった。そんな自分が嫌になったのを強く覚えている。そして迎えたリーグ戦では神奈川大学に惨敗。悔しさだけが残った。
「医学部とラクロス部は本当に両立可能なのか?」そんなことも考えたが、大学でも活躍する一個上の憧れの先輩たちの姿にも感化され、やはりこのままでは終われないという気持ちで大学でもラクロスを続けることにした。
大学1年生
前年度に真の日本一を達成したメンバーで構成されたAチームは遥か遠くにいて、目指そうとすら思わなかった。とにかくBに食らいつこう。そう思って、覚悟を決める意味でBチームに上がった瞬間、もう絶対に落ちれないように退路を断とうと思い、CチームのLINEグループを抜けたりしてみた。当時の自分は全くそんなつもりはなかったのだが、周りからみたらなかなか過激なムーブに見えたみたいで、「お前って本当に尖ってるな」と嬉しそうにニヤニヤした福山さんに何度もいじられたのが懐かしい。結果的にBで主力には全くなれず、Bリーグブロック戦で数点決めただけで、1年目を終えた。
大学2年生
AチームでMF5枚目に選ばれ、環境に甘えた。試合ではたいして活躍できなかったが「下級生だし、同期の中では一番だから今はこのままでいい。」その慢心が一番の敵だった。そしてFINAL4・法政戦。エキマン左横を任せてもらったのに、ボールが回って来るたびに怖くてショットが打てなかった。試合後、涙を流す4年生を前に、申し訳なさと情けなさでいっぱいになった。自分が決めていればという驕りではない。本気でラクロスに向き合ってきた先輩の背中に、自分の二年間の“適当さ”が突きつけられた。ここで「本気で向き合う」と決めた。学年幹部に立候補し、日々の自主練、苦手なラントレからも逃げずに向き合い始めた。
大学3年生
幹祐さんとりんたさんが率いる新体制のもと、徐々に試合で点も決めれるようになり、確実に上手くなってる実感があった。そんなある日、ステップバックしようと足を踏み込んだ瞬間に「グキッ」という大きな音と共に膝に走る激痛で地面に崩れ落ちた。前十字靭帯断裂。親に連れられた病院の帰り、車の助手席で泣き続けた。怪我と向き合えきれず、この1年間自分はラクロスから逃げるしかなかった。できることは山ほどあったはず。壁当て、ジム、動画研究。復帰したら自然とAに戻れる、最終学年で出場機会は来る。そんな甘い幻想のまま時間だけが過ぎた。
そして大学4年生
代替わりの学年ミーティングで、あっさりとコーチが決まったとき、驚きとともに、覚悟を決めていた同期たちの姿がとてもかっこよく見えた。自分のためではなく、組織のために決断をする姿を見て、その瞬間、自分も腹を括った。
「最後は、同期全員で、慶應ラクロスを代表して勝ちに行きたい」
そう思った。そして、自分が今このチームで慶應ラクロスとして求められている役割は、試合で結果を出し、勝利に直結するプレーをすることだと強く感じている。気づけば同期とは大きな差がついていた。正直今の自分の言葉にはあまり説得力はないだろう。それでも選手を続けることを選んだ自分には、選手として日本一に貢献する責任がある。ここまで甘さや逃げを繰り返してきた分、最後はフィールドの上で体現します。
「挑戦なくして成長なし」
石村さんが練習中に何度も口にしていた言葉だ。
当時はふざけ半分で聞き流していたけれど、今になって自分の心に強く刺さっている。
自分は下級生の頃から上のチームに呼ばれることが多かった。しかしそれは裏を返せば、常にボーダーライン上にいるということでもあった。周囲の評価を気にして、ショットの速さという自分の武器だけで存在価値を示そうとした。その結果、挑戦をしなくなった。
でも、シュートは速さだけじゃない。精度、ゴーリーとの駆け引き、キャッチからの速さ、ヘッドの位置――様々な要素が絡む。挑戦しなければその幅は広がらないし、勝負どころで決めきる力も生まれない。「太夫、もっとゴーリーと駆け引きしな。」りんたさんに何度も言われたのを今になって思い出す。
自分と同じように“新しい挑戦”を避けている選手も少なくないのではないかと思う。自分が得意ないつもの動作やショットの精度を維持することだけに時間を使ってしまい、挑戦を置き去りにしてはいないだろうか。もちろん武器を磨くことは大事だ。しかし、新しい挑戦なくして大きな成長は絶対にない。
オフェンスリーダーの海が今でもビハインドや裏1on1に挑戦している姿や、DFを蹂躙する1on1をすでに持つてんまが苦手なロールを取り入れようとしている姿を見て、改めてそう感じる。新しいことを最初から完璧にできる人なんていない。挑戦すれば必ずパフォーマンスは落ちるし、ときには人事評価に影響するかもしれない。けれど、怖がって挑戦を避ければ、かつての自分のように“期待を超えないプレーヤー”のままで終わってしまう。ショットは速さよりもコースや打つまでの速さにこだわってみる。キャッチミスしてもいいから引きキャッチにこだわる。1on1はあえてスピードを落として、間合いを広くしてみる。上手くできる日もあればダメダメな日もある。全部まだ全く習得できていない。でも、少しずつ自分の中で形になってきている実感はある。
そして挑戦は伝播する。岸がスターパスでクイックに挑戦し始めてからみんながクイックを意識するようになったように。しょうえいがPMスタンで即打ちに挑戦し続けるから、周りもキャッチからショットの速さを意識するようになったように。自分の挑戦が、チーム全体の挑戦を生むことだってある。だからこそ、一人一人の“挑戦し続ける姿勢”は個人の成長以上に大きな意味がある。
「挑戦なくして成長なし」
今の自分が一番伝えたいのはこの言葉です。自分の中ではどうしてもふざけたイメージしかないのであまり使いたくはなかったけれども、やっぱりこれが一番しっくりきます。
挑戦を恐れず、失敗を恐れず。挑戦し続け、周りもどんどん巻き込んで、圧倒的に成長し続けてください。
続いて恒例の感謝のメッセージコーナーです。
同期へ
人見知りなのもあって、あまり話せてない人もいますが、居心地が良くて大好きな代です。同期が頑張る姿が自分に火をつけ、原動力となってます。全部勝って、最高の4年間だったねと、最後にみんなで笑おう。
Aにいる後輩たちへ
今年の慶應の快進撃があるのは間違いなく君達のおかげです。ありがとう。ラクロスがものすごいうまくて、先輩を舐めてるようでちゃんと後輩ムーブもしてくれる、本当にいい後輩たちに恵まれてるなあと思います。
Bにいる後輩たちへ
Bリーグ敗退後のBは昨シーズンのように崩壊していくのではないかと危惧していました。でもそんなことは全くなくて、Bリーグ優勝という目標が失われてもなお、円熟味が増した3年生と鵜沼がしっかり指揮をとって、全員が熱いラクロスをしている姿はものすごいかっこいいなと感じます。その姿が自分にとって最高の刺激となっています。ありがとう。もっともっと上手くなって、一緒に日本一取ろう。あとアップはもう少し早く入ろう。
スタッフのみんなへ
先日峰岸が言っていたように、慶應が日本一恵まれた環境を持っているのは、間違いなくスタッフ組織のおかげです。下級生の頃からチーム全体のことを考えて動いている選手なんていません。その役割を下級生の頃から担っているスタッフの凄さを4年になって、組織全体が少し見えるようになってきた今、実感しています。
だからこそ、試合で選手が活躍し、チームが勝利した時には、「この勝利は自分たちも一緒に作り上げたものだ」と胸を張って、ぜひガッツポーズをしてほしいです。みなさんの存在がなければ、僕たちは勝負の舞台にすら立てていません。いつもありがとう。今シーズンも残り半年。最後まで一緒に戦い抜こう。
りんたさん
覚えていないと思いますが、「大学でも待ってるよ」という言葉が、医学部との両立で入部を迷っていた自分の背中を押してくれました。高校から大学までたくさん気にかけていただきありがとうございました。最後の一年、一緒にプレーできなかったのが心残りです。「打倒りんた」は夢のまた夢になりましたが、少しでも日本一に貢献できるように頑張ります。
落合さん
2年生の頃から気にかけていただきありがとうございました。練習中に、「太夫いいじゃん!うまいね〜!」と声をかけてくれるのがいつも嬉しかったです。落合さんとももっと一緒にプレーしたかったなあ。また3人でご飯行きたいです。聞きたいことたくさんあります笑
入谷さん
たまに入谷さんの過去の動画をみて推し活してます。憧れの37番をもう少し輝かせてから引退するので、またご飯連れて行ってください。研修医の大変さや楽しさも教えてください。あと、准一くんが今学期で評定6.3という大快挙を成し遂げました。留年の心配はなさそうです。一応報告しておきます笑
たくみさん
コロナ期間で一緒に練習した日々が間違いなく今の自分のラクロスの基盤となっています。技術だけではなく、ラクロスに向き合う姿勢などたくさん教えていただき、感謝してもしきれないです。「誰よりも先にメニューのポイントに入る。そういう小さいことでも練習の質を上げていける。」というたくみさんの教えが、疲れてヘルメットの上に腰をおろした自分を立ち上がらせてくれます。今度飲みに行くのが楽しみです。
最後に両親へ
いつも一番に応援してくれてありがとう。長いラクロス生活も最後の一年です。暑い中全ての試合に観戦に来てくれたこと、時差があるのにライブ配信を見てくれたこと、早慶戦のためにわざわざ帰国してくれたこと、全部が最高に嬉しくて自分の力になってます。もう一踏ん張りするので、これからも応援よろしくお願いします。学生生活はまだ2年以上もあるので、全て終わってからまたしっかり感謝を伝えたいと思います。
以上をもって自分の日記リレーは終わりです。ご精読いただきありがとうございました。
続いては今シーズンOFリーダーを務める海にバトンを渡します。
お調子者な一面と物静かな一面を持ち合わせていて、ときどきどちらが本当の姿かわからなくなります。最近は〇〇才の彼女ができたという噂を聞きましたが、流石に何かの間違いでしょう。同期の中で誰よりも真面目にラクロスに向き合ってきた海はきっと素晴らしい文章を書いてくれると思います。私も楽しみです!