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日記リレー

【日記リレー2025 vol.20】 「学生主体の最小単位」~堀川元(4年/商学部/C/慶應義塾志木高等学校) ~

細田実路君からバトンを受け取りました、4年Cコーチの堀川元です。
 
よく焼けた肌がトレードマークの彼は、本場仕込みのフィジカルと巧みなクロスワークを武器に、来日後目覚ましい成長を遂げてきました。背景と同化しナイターになると手が付けられないとか。長年の諜報活動の結果、彼には外国の血が入っていることがわかっています。峰岸は安心してください。
ミロとは一昨年育成リーグを共に戦っていましたが、彼はその裏で留学の切符を掴み取り、現地でも学業とラクロスを両立するというハイスペック人間です。留学で学年が変わってしまい寂しくなりますが、これからもよろしく。
 
はじめに、平素より弊部に関わってくださっている関係者の方々へ心より感謝申し上げます。皆様のサポートのおかげで、恵まれた環境でラクロスができることを日々実感しています。今後とも変わらぬご支援、ご声援のほどよろしくお願いいたします。
 
毎年この日記リレーを読みながら、自分と似た経験をしてきた先輩から学びを得たり、時には初心にかえったりしていましたが、いざ自分の番になると何を書けばいいのかわからずなかなか筆が進みません。加えて、引退が決まった後に書くことを想定していなかったこともあり、まだ実感が湧きませんが、今年コーチとして関わってきた選手たちに伝えたいことを書いたので、最後まで読んでいただけると幸いです。
 

 
さて、皆さんは「学生主体」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
 
慶應では受け継がれている概念ですし、ラクロスをやっていれば新歓等で一度は耳にしたことがある言葉だと思います。おそらくその言葉に惹かれて入部を決めた人も多いでしょう。かくいう私も、平日社会人指導者がいない学生だけのチームが、日本一を目指して活動していることに憧れを抱いたのが入部理由の一つです。自由や裁量がある環境は魅力的ですが、それを維持し、安定した結果を出し続けることはすごく難しいことです。中高の部活動で、厳しい顧問がいる環境とほぼ学生だけで活動する環境の両方を経験し、学生主体で活動することの難しさを痛感してきた自分にとって、学生だけで切磋琢磨している様子はそれだけで輝いて見えました。
 
しかし、いざ入部してみるとどうでしょうか。幹部陣やスタッフ、マーケなどダイレクトに運営に携わっている人たちを除けば、大多数の部員はそこまで学生主体を意識せずに過ごすことができると思います。長年先輩方が積み上げてくださった体制や環境が下地にあるこの部活は、規則を守り与えられた練習をこなしていればある程度回り、そこそこの結果が出るようにできています。ただ、学生主体が求められるのは運営だけでしょうか。実は、もっと身近で基本的なところにあるはずです。
 
専用グラウンドを持たないラクロス部は、限られた時間しか全体練習ができません。自主練や筋トレ、練習動画を見返すことなどに割いている時間を足し合わせると、グラウンドで練習している時間より長い人が多いと思います。一人で努力しなければいけない時間が多いということは、その分自身で考え、課題と向き合うことが必要になります。もし伸び悩んでいる人で普段の練習や自主練が作業のようになっている人がいたら、一度立ち止まって自分のプレーや取り組み方について考えることに時間を割いてみてください。成長曲線のカーブは一定の水準に達すると緩やかになっていきます。アーセナルの頃は無心で自主練をしていれば上達していたのが、いつの間にか同じ練習を繰り返しても成長を感じられないようになっていきます。そこで意識を変えたり、やり方に工夫を加えたりしていますか。文字にすると面倒くさいことに聞こえますが、すごく小さなことの積み重ねでいいと思います。それは、壁当てに行く前に毎回上手い人のフォームを動画で確認することかもしれないし、行きの電車で前日の反省を振り返り、自分の中で意識点を設けてから練習に向かうことかもしれません。「学生主体」の最小単位は、こういった一人一人の小さいけれど主体的な取り組みだと思っています。
 
今でこそこんなことを言っていますが、私も惰性で練習をしていた時期があります。壁とジムでいつものルーティンをこなし、翌朝、前日の66の総括がうろ覚えの状態で練習に入る。こんなんで上達するはずがありません。それでも、通学時間が長く、近くに住む部員が少ない私は、段々と考えて練習をするようになりました。アーセから2年生の途中までは、まっちゃんと練習後に朝ごはんを食べ、一緒に壁とジムに行った後もう一回ご飯を食べてから帰るというルーティンを繰り返していました。暑い夏も仲間がいれば考えなくても楽しくラクロスができ、前十字靭帯を損傷し長い間練習に入れなくてもモチベーションが保てていました。しかし、チームが分かれ、一人で自主練に行くことが増えると、無心で続けていた壁当てやジムが苦痛になっていきました。その頃から、自主練がルーティン化しないように、自分の中でその日の自主練のテーマを決めたり、壁当ての時間を少し削ってでも参考にする選手のプレーをインプットする時間をつくったりするようになりました。どうしたら動画の選手のようなプレーができるのか研究していくうちに、自然とプレーを言語化できるようになっていきました。
 
今年Cコーチを志願したのも、この時の経験があったからです。下級生が多いこともあり、基礎技術を言語化して教えることを意識して今シーズンを過ごしてきました。例えば、「縦振り」は指導の中で当たり前に飛び交っている言葉ですが、「どうやって縦振りをするのか」、「なぜその選手は縦振りができていないのか」、「どういう意識をすれば改善されるのか」、「そもそも縦振りをする理由や必要な局面は何なのか」まで説明できるように考え続けてきました。しかし、逆にアドバイスが裏目に出てしまったり、時には選手から鋭い質問をもらって選手に成長させてもらったりすることも多々ありました。Cの選手たちを見ていると、言われたことを意識できている一方で、それを自分の中で咀嚼し、今後自分に何が必要なのかを主体的に考えられている人はまだ少ないと感じます。
 
「スタートラインは皆同じ」
 
これもラクロスを始める時に聞いたことがあるフレーズかもしれませんが、正しいものの誤解しやすい言葉でもあると思います。実際は、体格や経験スポーツ等で差があり、一緒に同じ練習を同じ時間こなしても、結果は同じにはなりません。だからこそ、誰かに合わせるだけではなく、自分に必要な努力を考えることが求められます。特に、大所帯で高校からの経験者もいる慶應ラクロス部でリーグ戦に出るためには、基本的な実力の上に、何か他人に負けない強みが必要になります。今思い返すと、選手としての3年間、自分の弱みや課題にフォーカスし続け、強みを伸ばすことを意識せずに過ごしてしまった私には、この視点が足りなかったなと感じます。
 
もう一つ同時に伝えたいことは、ラクロス自体に関心を持ち、楽しむことです。すでにラクロスを楽しむことの大切さについて同期の何人かが書いていましたが、本当にそうだと思います。SEKAI CROSSEの実行委員をしていた時に出会ったPLLの選手たちも、トップ選手は皆ラクロスが好きで、途中過程の努力を楽しめる人たちだと言っていました。慶應ラクロス部は、その伝統ゆえに守るものが多く、義務感で練習している人もいるように感じます。他大学に比べて内部生が多いのもあって、ラクロス面でうまくいかなくても昔からの友だちがいるからなんとなく続いてしまう側面もあるかもしれません。どちらも大事なことですが、一人で努力する時間が長い部活だからこそ、ラクロスそのものへの関心や楽しむ気持ちは大切にしてほしいです。
 
とはいえ、試合に負けた時やなかなか評価されない時など、ラクロスが嫌いになることもあると思います。そんな時にモチベーションになるのは、私の場合は日々の小さな成長でした。昨日、先週、先月できなかったプレーができるようになったり、間違った癖が染みついていたフォームが改善されたりといった他人からしたらどうでもいいような小さな変化がモチベーションになり、ラクロスを楽しむことに繋がっていました。
 
他大学と合同練をすると、選手に質問されたりスタッフが集合のフィードバックをメモしていたりして緊張しますが、Cチームの選手にもそれくらい貪欲さがあってもいいのになと思います。義務感から来るやる気は、内から溢れる主体的なエネルギーには勝てません。日頃からNCAAや社会人の動画を見たり、外部のクリニックに参加したり、来日したPLLの選手に質問しまくったりしていたのも、今思えばラクロスが楽しいから自然と行っていたことで、ミスをして迷惑をかけたくない一心で練習していた時には考えられなかったことです。例年、アーセナルが解散した後モチベーションを失ってしまう選手を見かけますが、チーム内外問わず自発的にアクションを起こしてみてください。まだまだラクロスを楽しめる余地が残されているはずです。
 
ここまで偉そうに語ってきましたが、私は選手として結果を残せたわけではありません。怪我で出遅れ、復帰後いつしか追い越すことより追いつくことが目標となっていた自分に甘さがあったことは、今振り返ると後悔しかありません。それでも、コーチに転向してから、選手時代に考え試行錯誤を繰り返した経験に助けられています。一人一人が、日々の練習で主体的に考えることが、結果的にチーム全体としての「学生主体」につながるはずです。今年Cで関わった選手たちには、考えることから逃げずに4年間を駆け抜けてほしいと思います。
 

 
ここからは、恒例の感謝コーナーです。書ききれない人が沢山いますが、それはどこかで直接伝えさせてください。
 
同期へ
チームやラクロス歴関係なく仲が良い最高の代だと思います。4年になり、役割が変わっても各チームで頑張っている同期が日々のモチベーションでした。まだ引退が決まったことが受け入れられていません。育成メンツとアーセコーチは最後まで走りきろう。
 
旭さん、玉置さん、荒井さん、清水さん、加賀さん
結果が出ず苦しい時期も常に気にかけてくださりありがとうございました。今でも部活に対する姿勢は、間違いなくアーセ時代が基準になっています。プレーで恩返しすることができず申し訳ない気持ちですが、コーチとして少しでも学んだことを部に残せたらなと思います。またなにかあったら相談させてください。
 
水上さん、道川さん、石黒さん、柴さん、牧さん
アーセの大半をリハで過ごした自分に一からラクロスを教えてくださり、ありがとうございました。最初はプレーに自信がなく周りに合わせるばかりの選手でしたが、この2年間で視野が広がり、全体を見てプレーできるようになったことで、コーチに転向してからも選手の小さな変化に気付くようになりました。Cの選手への接し方も参考にさせてもらってます。
 
大畠
コーチになってから、戦術や方向性で困った時、いつも助けてくれてありがとう。選手時代からもっと聞いておけばよかったと後悔しています。尊敬している後輩です。先延ばしにしてきた飲み、開催しよう。
 
スタッフ陣へ
コーチになってから、以前より一層スタッフの凄さを実感しています。特にトレーナーの方々には、膝を怪我してから毎練習、時には自主練やクリニックまでもテーピングをお願いしていました。おかげさまで今ではテーピング無しでもある程度プレーできるようになってます。本当にありがとうございました。
 
両親へ
いつも応援してくれてありがとう。大学まで部活で振り回されることは想定していなかったと思います。家族のサポートがなければ間違いなく4年間続けられていません。あと少しだけ迷惑かけさせてください。

今年Cチームで関わった人たちに向けて
 
多田、花岡
二人とならできると思ってコーチになる決意をしましたが、間違っていなかったです。三人とも性格は全然違うタイプですが、ラクロスに向き合う姿勢は同じで、これ以上ないチームワークだと思ってます。最後絶対優勝しよう。
 
羽根田
いつも飄々としてるけど、選手として葛藤することも多かったと思います。上げることができなくて申し訳ない。後輩へのアドバイスや自主練を率先してやってくれてすごく助かってます。
 
青木
酸いも甘いも経験してきたからか面倒見がよく、青木がいるだけで後輩がプレーしやすそうです。ただ、もう一度選手としてギラついてる青木も見たい。最後力貸してください。
 
壮太
なかなか終わりが見えないリハが昔の自分と重なって、個人的にすごく応援してます。怪我前のキレに加えて新しい武器も増えてきて今後が楽しみです。怪我の経験がいつか活きてきます、頑張って。
 
網野
日に日に技術だけじゃなく責任感も高まってきてる気がして頼もしいです。決勝で今シーズンの集大成を見せてほしい。またレースの話でもしましょう。
 
良祐
もうだいぶ長い付き合いですが、初めて会った時と比べると別人かと思うくらい上手くなっていて感慨深いです。明確な強みがあるから、すぐに上のカテゴリーでも通用するようになるはずです。怪我が心配ですが、来年以降さらに活躍してくれると信じてます。
 
圭司
初めて大学の練習に来た時は理想のプレーが先行しすぎて一人でラクロスしてる感じだったのが、気がついたら手が届かない選手になっていました。そのラクロスへの探究心、今後も大切にしてください。
 
有起
いつもフワフワしてますが、度重なる怪我を乗り越えてきた強さがあるはず。シーズン当初は慌ててた11も、最近落ち着きが出てきて目を見張るものがあります。ラクロスを楽しむ気持ちを忘れずに。
 
泰征
圧倒的落ち着きと鋭い洞察力で何度返答に困ったかわかりません。帝王学の賜物でしょうか。今シーズンでだいぶフィジカル頼みではないプレーができるようになったと思います。来シーズン期待してます。
 
佐伯
今年Cの選手の中で一番話した気がします。「はい」しか言わなかったシーズン当初から、自分から質問をしたり自主練の動画を送ってくるようにまでなって、成長を感じてます。まだまだ伸びしろだらけです。ビビらずに頑張ろう。
 
小川
学業との両立や選手としての悩みもある中、すごく頑張ってると思います。必要な時に活躍してくれる頼れる存在です。来年以降は後輩を引っ張っていく立場です。応援してます。
 
長瀬
得意な形に固執しがちだったのが、最近プレーの幅が広がってきて嬉しい限りです。羨ましいほどのポテンシャルを余すことなく活用してください。一歩一歩着実に。期待してます。
 
磯貝
綺麗なフォームに加えて声で周りも動かせる頼もしい存在です。オフェンスにいるだけでチームがまとまるのでいつも助けられてます。さらにスケールが大きい選手になってほしいです。
 
橋山
アーセ時代から上手かったとはいえ、リハ期間中黙々とシュート練習をしていた成果が出てきていると思います。来年はAの主力として活躍してくれるでしょう。佐伯をよろしく。
 
溝部
心配することが無さすぎて特に言うことがありません。Cチームの全選手に手本にしてもらいたい存在です。フィールドもできるFOとして輝いてください。
 
一丸
ボールが収まらずポロポロしている印象だったのが、いつの間にかエグいシュートを放つ選手になってしまいました。Bのレベルでもかなりやれている印象です。練習しすぎて怪我しないように。
 
小澤
少しアドバイスしたら次のプレーから修正してくる理解力の高さに毎回驚かされます。ここ最近得点が増えてきて、一段レベルが上がった気がします。一丸と一緒に序列上げていってください。
 
吉村
塾高組で一番安定していて良くも悪くも目立たなかったのが、久しぶりに見たら上手くなっていて成長を感じました。ヘラヘラしている裏で相当練習しているのでしょう。その舐めた態度で上手い人からどんどん吸収していってください。
 
望月
上手いけど荒削り感が強かったのが、夏休みを境に一気に安定感が増した気がします。フィジカルが付けばもう止められないでしょう。来年以降リーグ戦で見られるのを楽しみにしています。
 
長々とまとまりのない文章になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
 
次は、今年の慶應DFの要である増田友翔君です。スカしたオーラと歯に衣着せぬ発言のせいか、一部の後輩に本気で恐れられている彼ですが、実は苦労人なので真面目で泥臭い選手には優しいはずです。今シーズン怪我に苦しみながらも、final4で体に鞭打って必死にボールを追い続ける姿を見て、後輩への熱いメッセージを残してくれると確信しています。では増田よろしく!

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